ほほえみ 第16号

懐かしのマッフ  赤木 利子

大正時代から昭和にかけて、私はマッフというものを使っていたことがあった。
それは綿入れの絹で作られた30センチ程の枠で、両掌を両方から突っ込んであたためる物だった。それはほんの一時期だけで実用的でないので、一般では使わ れず流行はしなかった。今のようにストーブや電気器具もなく、冬はすごく寒く辛い季節だった。
マッフを使って掌がぬくもると、身体じゅうの血や肉のかたまりがゆるんで、胸の中までほんのりとしてくるのである。
マッフは、ヨーロッパあたりの貴婦人の使うものであったらしい。そういう特種な物で、2年くらいは私の手元にあったが、いつの間にか無くなってしまった。同じ横浜で暮らしていた女性たちでも、恐らく誰も持ってはいなかったと思われる。
マッフの感触とぬくもりは、92才の今日には、悲しい幽かさとなってしまった。それでも、マッフという名前だけは頭から消えなかったのである。この名前か らは色々なことが連想されて、懐かしさがこみ上げてくる。宮城道男の琴の演奏会にも持って行き、うしろの寒い席で聞いていたのを思い出した。
まだまだ、ボイルのショールとか、絹のくつした、パラソル、オペラパック、(オペラバック)だろうと思うのだが・・・。
お鈴さんにもらった、オレンヂ色のビーズをびっしり埋め込んだ力作の小さいバッグは30才の利坊が持つには早過ぎたようだ。
前にコテイの粉おしろいと、一枚のチョコレートと交換した時のように、またまた高梨さんにうまいこと言われて、緑色の、どこにでもあるようなハンドバッグ ととりかえっこしてしまった。よく高梨さんという名を覚えていたと、不思議に思うくらい歳月が過ぎていたのである。後になって、15、6才になってからで あるが、あのビーズのバッグを交換してしまったことをひどく後悔していた。13才の利坊失敗談である。


中庭での食事会  三好 キヨ

入園して、初めて、いも煮会に申し込みをいたしました。幸いに、当日は雨もふらず緑の多い中庭の心地よい空気の中で食 堂とは又ちがった芋煮を頂きました。それに、シシャモが好きな私に、思いがけなく、はら子の一杯つまったのをたくさん頂いて、私にとってはほんとうによい 一日でした。お手つだいの方が、私も以前よく使っていた七輪で、うちわで火加減を見ながら焼いておられたのも、ほほえましい風景でございました。
ふるいお知り合いの方ともお会い出来て、楽しかったです。


素敵なプレゼント  フロアボランティア 榎本 秀子

緑寿園ボランティアとしてお世話になって早10年余の年月が経ちました。
其の間利用者の皆様から楽しいプレゼントを沢山頂きました。入浴後の一時です。
お隣の保育園からにぎやかな声が飛込んで来ます。皆様と一緒に表庭へ東京音頭等唄い乍ら出掛けました。先ず大倉さんの笑顔○○さんお散歩と声を掛けて下さいます。
「ハアイー孫達が待っているのよー」と言い乍ら園内へ入ると「アラーおばあちゃんだー」と言って庭の草花等可愛い手で「ハアイこれあげる」と其のしぐさの なんと愛らしいことでしょうか「花をつんではおつうむに差せば」と楽しく唄うかたわらで「おばあちゃんボール投げしようようねえ」つられてボール投げ等し て一遊び「では又ね」「ウン又ねバイバイ」とお別れをして帰りがけ大倉さんの農園へ一廻り「アラきゅうり、トマトが赤くなっている」めずらしさにチョイと 手が出て「とれちゃったーどうしよう」「お土産に持って行こうか」楽しかった思い出はつきません。そして表へ出られない日にはボール投げです。運動の得意 な私はボール投げはお手のものです。「ボール投げしよう」と声をかけました。
皆様も学生時代にもどってうけてくれます。輪になって私が中へ入りボール投げです。
片手で上手に受ける人、私もまねて片手でポイと、あらボールが逃げちゃった一笑 ハイ一寸高いよ上手に受ける相手「こんどは廻し投げだよい」にこにこ顔で ボールに飛びつく方、私達ボール投げの戦士だものこんどオリンピックにでようか、隣からは「おそいなー早く」自分の番がまわってくるのが待ちきれずイライ ラする方、汗だくだくの私「もうやめようか又ね」「もう少ししようよ」「ではあと一廻りでおしまいね」「夕やけこやけ唄ってお別れね」「又しようねー楽し かったねー」帰りぎわに涙がほろり~そして今は碁目並べが待っていてくれます。
之は頭の問題です。今日いかが妹には花を持たせてね」「我儘を言う妹がふくれるから一寸手加減してね」何時もの挨拶です。のりすぎて大声を出しフロアの皆様ごめんなさい。
そして帰りがけに職員の皆様からご苦労様素敵な笑顔のプレゼントをいただき有難うございました。至らぬ私に皆様からあたたかい手をさしのべて頂きましたことは何物にも変えられません。

ピカピカの宝石何時迄も大切に致します。

マジックショー  生活改発室 奥住 朋代

今年の4月よりこの緑寿園に入り、私にとって初めての大きなイベントが「夏祭り」でした。毎年ダンス等の新人余興があ ると知った時は、楽しみな反面不安も大きくありました。そしていよいよ準備段階に入り、皆様に楽しんで頂け、且つ「笑い」のあるものが良いという事にな り、様々な提案が出ました。その結果、私たちは笑いのあるマジックショーを選択しました。いかに、分かりやすく笑って頂けるか、その一点に焦点を当て日々 眉にシワを作りながら検討を重ねていきました。
そして、本番。私たちの不安とは反対に、皆様の温かい笑顔と拍手がそこにありました。皆様に楽しんで頂けたこと、そして何より私たち自身も楽しんでできたことにとても嬉しく、感謝の気持ちでいっぱいになりました。
つたないマジックでしたが、温かい笑顔と拍手を頂き、ほんとうにありがとうございました。


編集後記  生活改発室 梶川 夕希子

この秋、久しぶりに夫婦で旅行をしました。そのきっかけは、昨年度、園から永年勤続のご褒美に頂いた旅行券です。
一年以内に使用しなければならないのに放置したままリミット寸前。そんな時突然、夫が「旅行しよう」の一言。旅行券が使えるチャンスと重なり、それからあれよあれよ・とんとん拍子
旅先案内人は私の役割です。観光地はシーズンオフなのか人が少なく…しかし夫は上機嫌。日々雑踏の中で生活しているものには、心穏やかに、ゆっくりと話し合える時間を過ごすことができました。
きっかけの『旅行券』には感謝・感謝です。来年も、ほほえみに1ページが綴れますように…。